田舎の暮らし

よく田舎に行くとこんなところに住んでみたいと言う人がいるが、私はそうは思わない。今回アヌーナのツアーに同行しホントに不便で最寄りの駅へもタクシーを呼ばないとだめなような場所に宿泊した。そこはとっても素敵で温泉でお肌はツルツルになっちゃうし、皆もすごく喜んでいたから、それに水を差すつもりはないのだが、やっぱり地方と東京の差がどんどんひどくなっているのを実感した2日間でした。

もちろん郷に言っては郷にしたがえ。ミュージシャンから文句がでない限り、朝7時にグループ全員が1度に取らないといけない朝食も、9時にしまってしまう夕食も、もちろん逆に楽しまなければだめだ。以前ディズニーランドに行ってホントに引いたことがあったが…いやいや、いったんそこに行ってしまったら絶対に楽しまなければルール違反なのだ。(同じ理由で地中海クラブとかそういうところにも絶対に行きたくない)というわけで温泉ライフを満喫。12時には寝て、朝ご飯の前に温泉に入り、朝ご飯食べて温泉に入り、夕飯前と後にも温泉に入り、マッサージ機に座り、とっても楽しくすごした。朝ご飯は山盛り3杯おかわりした。旅館のおばちゃんは通じてようが通じてまいが、日本語でミュージシャンたちにニコニコ話しかける。すごく親切に良くしていただいた。旅館の皆さんに感謝、感謝だ。

アヌーナの皆さんもみんな異文化に接するのが大好きなので、とても楽しんでいる様子だった。良かった。彼らは英語のサインがないながらも、どこから情報を得たのか「マッサージは朝11時からなんだって」と喜んでいたが(この日のロビーコールは12:30)、その先生は(旅館の人いわく)いつものように1時間以上遅れ、結局たのしみにしていた彼らはマッサージを受けることができなかった。こんな田舎の温泉宿では、先生の仕事の量もそれほどないだろうと察するが、それにしても前日にどんなグループが来るかくらいチェックしてたまには時間通りに出勤してはどうかと思う。ちなみに私だったら、もう絶対に早めにオープンして英語のメニューを用意したりする。田舎で仕事がないとかいう前に前日にどんなグループが宿泊するかぐらいチェックしておけないものかと思った。でもそれはきっと余計なお世話なんだろうなぁと思う。知り合いで同じ村おこし関係に関わって2年で抵抗勢力の激しさに撤退した人を知っている。この価値観の違いが本当にすごい。なんてノンビリしてんだろう……私などはこんなところに住んだら、いっぺんにボケそうだ。でも分からない。もしかしたらものすごくクリエイティブな仕事ができるかもしれない。

それにしても、いくらさびれた温泉宿でもインターネットくらい引いて、英語だけではなく中国語の表示やサイン、メニューなどを用意したら、本当に流行ると思うのに! 本当にもったいないと思う。山にかかった雪や本当に美しい紅葉。こんなに綺麗なところなんて世界中さがしても滅多にない。ご飯もこんなに美味しいのに! 本当にもったいないと思うのであった。

ところがこういう田舎でもTVを付ければ都会のペースで東京と同じ調子でTVは流れる。都会の都営線と営団地下鉄が、どうのこうのという都内の人間にしか分からないようなニュースが流れる。この違和感はなんだ。田舎の人たちは取り残された気持ちになっちゃうんじゃないのか。都会/田舎どちらがいいとか悪いとか言うのではない。価値観がまったく違う、ということなのだ。そしてその価値観が違う同士をつなぐものが消えてしまっているように感じる、という事なのだ。

ツアーから離れ、帰宅するのに乗った新幹線は平日昼間だというのに、かなり混んでいたが、新幹線やコンサートホールなどだけではなく、こういう人の意識を変えていけば、こういう素敵な場所は結構世界で勝ち抜けると思ったのであった(っていうか、勝ち負けとか言っている時点でもうダメなんだろうけど/笑)。そしてそれが素敵な田舎に、悲しいかな原発が建ってしまう理由の1つでもあるのではないかと思う。