ピーター・バラカン「ラジオのこちら側で」

ピーターさんの新著「ラジオのこちら側で」を読みましたが、面白い! まぁ〜すいすい読めちゃいました。ピーターさんがどうやって日本に来られるようになったか、また各名物番組でのエピソードなど、この前の本「魂のゆくえ」や「ぼくが愛するロック名盤240」「猿はマンキ、お金はマニ」等で、すでに知っていたことも多かったけど、それでもピーターさんのラジオ人生をしっかりと中心にした本はこれが初めてかも。いや〜、面白かった!

知れば知るほどピーターさんってピュアな音楽ファンなんだよなぁ、と思う。私が前の本でも、そしてこの本でも好きだったのは、好きなアーティストを勝手に応援して上司に怒られたりする一連のシンコーミュージック時代のエピソード! まるでメーカー勤務時代の私みたいだ。私も好きじゃない物を応援するのはホントに辛かった。音楽って自分が好きじゃないものをやらなきゃいけないときは、まるで地獄だし拷問だよね… 仕事自体もすでに、めっちゃきついし。好きで応援したいという気持ちがなけりゃ絶対にできない。このヘンは今も私は成長できてないけど。成長したいとも思わない。

それにしてもニック・ロウのシングル音源を記事で紹介し「これは音源は日本では手にはいらないから、僕が電話で聞かせてあげます」と会社の電話番号を載せて、上司に怒られた、とか(笑) 笑った、笑った! そしたらほんとに2、3本電話がかかってきて、それを電話口で聞かせてあげた、とか。でもそれがホント、ピーターさんの原点ですよね。好きな曲をみんなに聞いてもらいたい、それが共感だって。ヘッドホーンのくだりでも「音楽はみんなで聴くものだ」っていう発言がとても心に残った。

そうなんですよ。音楽って心の共鳴なんですよ。この音楽がいいな、と思う、そういう気持ちの共鳴ね。それによってアーティストが、自分ことを分かってくれたような気持ちになる。以前ロビン・ヒッチコックが「ボブ・ディランを聞いたとき、世界は上手くいかない、って悩む僕の気持ちを分かってくれた、という気持ちになった」って言ってたけど。そんな感じだよね。そして同じ曲が好きだという人と、嬉しくなる。そういう事なんだなぁと思う。

そしてラジオの番組、TVの番組も日本人のスタッフと作り上げて行く難しさ。難しい中スタートし、それでもその中から生まれる新たな喜びなど、ほんとに楽しく読めました。この本は、皆さんにおすすめです。ピーターさんの番組が好きな人には絶対に読んでほしい。

ピーターさんといえば、ご本人は覚えていないと思うのだけど、エピソードがある。今から20年以上前、レコード会社で宣伝資料の評論家先生への発送などDM係をやらされていた私は、私の残業を片目で見ながらもとっとと定時に帰宅してく仕事をしない会社のおじさんたちにイライラしていた。働けば働くほど損をしているように思えるサラリーマン時代。が、ある日思い立って資料の送り元に自分の名前を書く事を思いついた。宣伝部…じゃなくて宣伝部 のざき、と書いて送ろう。そしたらある日、ピーターさんから「私あてに」電話がかかってきたことがあったのだ。まだ私はペーペーだったし、すでにピーターさんは「あのピーター・バラカン」だったわけで、社内中、みなビックリしていた。あの時はホントに嬉しかった。25年くらい前のペーペーの自分(笑) あれはものすごく励みになったのだ。

ってなわけで、若者の皆さん、今、すごく苦労していても見ていてくれている人はちゃんといますよ〜

それにしてもピーターさんの紹介する音楽は私も知らないものが多いんだよなー。でもこの本にも1つだけ私も関係するアーティストが。98年のドーナル・ラニーの来日。五反田のゆうぽうとでの公演。当時PR会社の片隅でレーベルをやりながらも、プランクトンさん/EMIのプロモーションスタッフとして働いていた私はピーターさんにドーナル・ラニーを紹介すべく奮闘していた。ピーターさんがなかなかウンと言ってくれないので、プランクトンの川島社長に「ピーターさんって優しいけど、時々外人特有のシビアなところがあるんですよねー」なんて言ってた(爆)ごめんなさい、ピーターさん。今なら「音楽ファン」のピーターさんにそんな風に無理強いすることはないのだけど。というか、プロモーションするにも、もうすこしちゃんとした説明をして初回すべきだったんだけど…なにぜ当時は私も若かった(笑)

翌年こうういうすごいCDを出してドーナルは日本に戻ってきた。なつかしいなぁ! 「彼がいかに大物か知らずに接したぼくは、その一貫して謙虚な姿勢に、あとから恥ずかしくなったほどでした」とのこと… ドーナル、分かる! ホントに素晴らしいミュージシャン、ステキな人ですよね。先日のパディとの来日もピーターさんがたくさん応援してくれた。だからお客さんがいっぱい来た。ありがとう、ピーターさん!

この曲4本のフィドルが入ってくるところが今聞いてもゾクゾクする。