鶴岡真弓先生のレクチャーを聞いてきました「ケルト文化と音楽の精霊」@無印良品

今日は有楽町の無印良品にある「ATELIER MUJI」に鶴岡真弓先生のレクチャーを聞きにいってきました。

以下は先生のお話をメモったものですが、私が録音もせずに聞きとったものなので、間違っているところ、理解がいたってないところなど多数あると思われます。でも自分用のメモと皆さんへの参考までに、ご紹介していきます。

無印良品は店内BGMを、ヨーロッパをはじめとする世界各地でオリジナル録音し、それをCDにして販売もしているのですが、最初のケルトものの録音はBGM4、アイルランド編。1996年のことになります。鶴岡先生がライナーを書いています(懐かしい!)。そして先月BGM18としてブルターニュ編が発売になりました。こちらも鶴岡先生のライナー。

19世紀後半になって昔の人の勉強する学問が出て来た。ケルト人、昔からいたわけではない。ヨーロッパ人は中央アジアから来たと言われている。カザフスタン/キルギスタンあたり。そこから西へ。BC2500年くらいからヨーロッパへ。

世界には3つの場所しかない。大陸/半島/島 私たちは基本的に日本列島に生まれてきた。そして二本足で歩き、大地からの恵みによって生きてきた。(ここで鶴岡先生面白くて、私は人魚だ、鯨だ、という人もこの中には居るかもしれませんが…とお話しされてました)

そして3つの生きものがいる。動物/植物/鉱物 鉱物はよく忘れられがちだけどミネラルウォーターなど生きているものと考える。鉱物を現代人はよく忘れているけど、ブルターニュの「地力」を「知力」と同じくらい感じてほしい。(このヘンはBGM18のライナーに詳しいです)

日本列島は小さな島。温泉や地面をささえているマグマは危険だし、トラフは動く、地震の多い揺れる大地=地力。震える場にいるというのがポイント。ブルターニュの力を日本人も感じる事が出来る。それが世界を結びつける。

「境界に生きる力」「エッジに生きる力」文明の中心は放射状に広がるが、たとえば文明の中心にいるとそこはあまり動かない。文明の中心は放射状に広がる。リーマン前のアメリカ、ローマ帝国など… 中心の意識がある、システム力は中心にある。でも中心の力が周辺の力へと拡散して、中心から来た文化や美学が放射状に広がる。周辺は響く。共振関係を作りだす。波紋になって共にふるえる。交響、シンフォニックな関係性。(うわーこのヘんのお話、開沼博さんとしてほしい!!)

ケルト人は中央アジアの古代文明で出来ている。合理主義ではない。アングロサクソン(デンマークとその下付近から派生した)は合理的、明瞭な答えを求める、システムを求める。ケルト人、日本人にはもっと以心伝心的なものをもとめる。

なんとなく「肌があう」「以心伝心」「気配」とかそういうものを重んじる人たちが、世界のいくつかのポイントに存在している。その人たちにはコミュ力があって、そこが魅力。(なんかこのヘン、先日の鷲野さんの「滅びた方の人類」の話とつながりそう…もしかしたらケルト人とはそういう遺伝子を持っているのかもしれない?!…と夢は広がる)

アイリッシュダンス。上半身しか動かさない。心という表に見えないものを表にあらわす伝統(ダンス,音楽)。(←めっちゃ大事)

日本とブリテン諸島は1,000km離れているが、ケルト文化への興味はつきない。懐かしさ、既知感。直接光ではない光。ぼんぼりの明かり。障子を通した光。かっぱ伝説など、異界的存在へ恐怖ではなく「親しみ」がある。そこに美的、震えるものを感じる。(こういうのツアーのテーマになりそう)

「島」というのはささやかな土地。震えるものにたいして感覚が研ぎすまされる。合理主義においてはYES NOは大事。株はゼロ/イチの世界。そういうリテラシーはもちろんあった方がいいのだけど、それだけで進んだらどうなるのか。日本人の宝は今回の311、原爆、原発をふくめ少しずつ経験しているという事実。それを宝にしてほしい。

(ここからが鶴岡節! 最高)先が短い人、歳を取っている人は濃く太く、先が長い人、若い人は細くてもいいから長く。勝負はミクロなところに、Touchしているか、していないかで決まるのだから。

蝉の羽根の中に美しさを見いだす。極めて微細なものにたいして震える。日本人だけでなく、地球上にいくつかいる。分有する。そのうちの1つのグループがケルト人。

…というところで、結論から先きに申し上げたので、ここから「やっと用意していた事を話します」と鶴岡さん。「ここからは大学院生の発表みたいになります」とのことで(笑)スライドを見せながら、次々と話題は変化していく。

1989年ベルリンの壁が崩壊。91年にEU内でヨーロッパの基層文化としてフランス、イタリアを中心にケルトのアート、デザインに感心が高まり大ケルト展が開かれた。「The Celts - first European」というタイトル。当時Euroが始まったりしてヨーロッパ内でヨーロッパのベーシックな遺産(=ケルト)を共有するという気風が高まった。ベルリンの壁の崩壊にがマイノリティ文化が表に発するマグマとなる。沖縄の文化にも注目が集まるようになる。

この1991年のベネチアの大ケルト展に続き、94年にはユーロビジョンで驚異の7分間=リバーダンスがスタート。これが世界を震わせた驚異のデビューだ。今みても超感動!



無限感、始まり終わりがない感じ。世界へのインパクトを与えた。西ヨーロッパにユーラシアの要素があったのか? ヨーロッパに東洋があったのか? そういう感覚。(しかしこう思うとホント私たちは面白い時代に生きてる!)

ケルトのエリア:アイルランド、スコットランド、ウェールズ、マン島、コーンウォール、そしてその対岸のブルターニュ。東の端はトルコ。アナトーリア。ガラテア人の手紙。西はイベリア、ピレネーの先まで。

周辺に位置する、エッジに生きる力。地の果て。エッジ感。終焉の地形。それを身体に取り込んでいる民族。中心から発生した大文明では最終的に人間を幸せにできない。こぼれる人の方が多い。→ 日本人はすごくケルト感が強い。

Irish Pubなどに見られる装飾文字。循環するアート。自己装飾するアート。ヨーロッパの美術、ギリシャ、ローマ、ルネサンス,新古典主義いろいろあるが、ケルトはアートにたいしてデザイン力をすごく持っている。マクロの中にミクロがあるのが普通なのだが、ケルト人や縄文人はミクロの中を探求し、マクロが広がるという美学。→ ケルトの渦巻き。

アイリッシュダンスの衣装の模様:渦巻き(Spiral)、組紐模様(Interlace)、動物(zoomorfic)の3種類。文字のアートも読まれる文字ではなく「見られる文字」、Vision  目撃し驚かせて覚醒することが目的。

ブルターニュの特徴:3つどもえのスパイラル、ゴーギャン、巨石文化をメンテナンスしてキリスト教へ手渡した。7月のパルドン(パードンと一緒、ごめんね、という意味)祭。キルスト教の罪をあらがう祭り。コアフ(白いレース)糊で固めた装飾文化。

Walesがまだ無印良品のBGMでは作っていない。詩人の文化。ドルイド=ケルトの自然信仰を司る司祭。バルド(bird)詩人。自然の声をきいて共同体へ。自然観=生きる力。
最近ゲーム界の人はこういうのが好き。賢者としてよくケルトの司祭が登場する。

スコットランド:フィオナ・マクラウド。スコットランドのケルトリヴァイバルに貢献した重要人物。Ever green。マッキントッシュ系の人たちも読んでいた。近代における記憶の復活。ジャポニズムも入っている。浮世絵も貢献している。

日本へは明治時代のお雇い外国人の中にアイルランド人がいて、「庭の千草」や「はたるの光」などを伝えられた。

アラン島 Man of Aran フラハティ。ドキュメンタリー映画。イエーツ兄弟。詩人と画家。
柳田国男「遠野物語」:忘れられ行くものを魅了的な言葉で表す。

受け身の文明だった。中国から、大陸から、アメリカから。物質文明が長く続いたが心の文化へ。境界に生きる意識。積極的に生きるものの特徴。→ そこから中央へ生きる者へ勇気を与える。

トリスタンとイゾルデ。トリスタン=悲しみの人。イゾルデ=アイルランドの姫、癒す人。ロミオとジュリエットの原型になったと言われている。ワーグナーのオペラになり、ジャン・コクトーの映画にもなる。単にロマンチックなものではない。悲しみのエッジ、癒す側のエッジ。エッジとエッジ 生き抜いて行く再生の物語。面白いのは2つの者同士だけではなく3つ目の意味が生まれる。愛、友情、奇跡? 両側のエッジにいるものが手をとりあって、3つ目のものをほおりこむと、回転しはじめる。未来へと価値のあるものが生まれる。それがケルト。

しかし鶴岡先生のお話しって、歴史とか過去のことを教えてもらいに行っているのに、未来への勇気をもらう、というホントに不思議なんですけど… 雨の中だったけど行って良かった。明日も頑張ります!


こちらは会場でゲットした、長らく在庫がなかった「装飾の美術文明史」Amazonでは、中古品が高額で取引されているようですが、再版になったみたいですから定価で買いましょう。

今は、有楽町無印でゲットできます。












そして鶴岡先生の新刊! もうすぐ出るみたい。さっそくポチりました。



参考図書。




というわけで、無印良品BGM18(ブルターニュ)はこちら

このメンバーでコンサートもあります。東京と大阪。無料だよ。申し込んでねー。詳細はここ








ちなみに今まで私が関わったアイテムは

BGM4:選曲が抜群。アラン・ケリーとポール・ケリーのトラックが好き。今は廃盤なのかな。ネットストアでは在庫を見つけられず。

BGM7:スコットランド。ハープ中心。なんとラウーのマーティンに始めてあったのはここなんだよね…懐かしいな〜。エディ・リーダーがなんと解説を書いてくれている。中川五郎ちゃんが訳してくれた。

BGM8:来週来日のヴェーセンのメンバーを個別に参加させました。ローゲルはヨーラン・モンソンと、ウーロフはピアノと、ミッケはチェロと組んでデュオで参加してもらった。貴重な録音です。私的にはBGMシリーズで一番好き。

BGM17:私が好きなのはイーマ・クインのヴォーカル。今でもよく聞いてます。

しかしすべて1,050円ですよ。信じられない! 


無印良品さんのBGM写真展。まだまだ開催しています。この後は写真家の方のワークショップが続きます。詳細はここ。CDや本は写真展やってるアトリエから離れちゃうんですけど、3Fのそれぞれのコーナーで売っています。