船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読みました

昨晩やっと読み終わった。すごい時間かかった。ものすごいハードな本だった。まるで戦争みたいだった。いや、間違いじゃない。これは原子炉との戦争だ。ホントにホントにホントに運が良かっただけだ、日本は。日本はなんとか生き伸びたけど、ホントに危なかった。

それにしても日本の危機管理制度のなさけないことよ。テレビでみたヒーローぶった人たちは実はヒーローじゃなかった。ホントのヒーローは吉田所長だ。そして現場の皆さんだ。そして自衛隊だった。文科省とかもう最悪だよ、最悪。偉い人たちは責任逃れもいいところだった。いったいこの国はどうなってんだろうか。もちろん組織の中には志が高い人もいたことだろう。が、ありえない! ほんとーにありえない。ほんとにひどい国だな、と思う。

アメリカがいったいこの国はどうなってんだ、と驚いたというのも無理もない。本来なら何千人という人の力で頑張らなくちゃいけないのに、一時はたった50名とかそういう人数で対処されていた福島第一原発。本当に本当に本当に危なかった。吉田所長も「10人くらいかな、自分と一緒に死んでくれるのは」と真剣に思ったのだと言う。

この本を読んで感じたのは、やはり吉田所長は真のヒーローだった。もちろん初期の注水時に判断ミスはあったのかもしれないが、吉田所長がいなかったら、ホントにダメだったのではないかと思う。菅さんについては評価が分かれるだろう。この本でも無用に機嫌がわるくなったり、怒鳴りつけたりイラ菅ぶりがひどいすぎる。やはり一国の首相というのは権限が大きすぎた。とはいえ最後の方に書いてあるとおり、菅さんだからこそこの事故について「ホントにやばい」という心で、注水に集中できた部分もあるだろう。それにしても、これが自民党だったらと思うと寒気がする。自民党だったら、もしかしたら真剣にものすごいテクニックを使ってすべてを小さく見せていた可能性は大だ。そしてまた彼らは原発を動かそうとしている。それにしてもこの原発事故が発生した時は民主党政権で、彼らの悪運の強さにはあきれかえる。

本を読み終わって意外にかっこ良いという印象を持ったのは海江田さん、細野さんあたりだ。枝野さんの会見は今思い出してもホントにすごい。ほとんど会見に手ぶらでのぞんだ様子がこの本にもよく書かれている。しかし、以前死刑の時にも書いたけど結局のところ大きく物事を動かせるのは「時の首相」なのだ。この本を読んで、これほど首相の権限がすべてにおいて大きかったとは、とは思う。

そして東電は…もう話にならない。東電みたいな会社は存在しちゃいけないと思う。特に清水。あいつは最高の悪だ。悪の悪だと思う。多少遅かった感はあるが、東電に乗り込んでいってそこに本部を作った菅さんの判断、そしてそこから細野さんが頑張るところなんて、ホントに手に汗を握る。

現場の吉田所長、そしてあまり話題にならないが、福2の所長もたいへんなヒーローだと思う。それに比べて、東電本部の連中は… 殺してやりたいと思っている人間がきっと何人も何人もいるだろうね。吉田所長だって相当ストレスだったに違いないよ。最初の1号機の爆発で、自衛隊員に怪我をさせてしまった、と謝る吉田所長と、自衛隊の会談の話には涙が出た。彼らは本物のヒーローだ。(あと意外とヒーローじゃなったのが東京都の消防庁の連中だ。ま、これについては省略)

この本はすごかった。先の戦争にも負けるのが分っていながら、なしくずしに参加して、戦略なく戦い、無駄な命がたくさん失われたことを私たちはすごく反省しているはずなのに、いまだ何ひとつ学んじゃいない。次に同じような事が起こったら、おそらく日本はダメだろう。そしてこのままだと同じ事は間違いなく起こる。こんなにすごい「原子炉との戦争」をして、今だに私たちは何も学んでないのはいったいどうしたことだろう。

今日も廃炉作業に向けて、福島ではたくさんの人が頑張っている。まだまだ戦いは終わっていない。