都市楽師プロジェクト、鷲野宏さんインタビュー「求道会館編 4」



「求道会館編3」から続く。

W:かっこいいですよね。

あ、もう1つ思い出した(笑) 近角常観という人は、僧侶として非常に有名だったので、相対性理論をつくったアルベルト・アインシュタインが日本にくる間にノーベル賞を取ったという報道があったんですね。日本に来た時にすごい熱狂的な歓迎を受けるわけです。

で、ああいう物理学の人間って、どうも東洋思想というか、アジア的なものの考え方に惹かれる人が多くて、仏教の人と会いたい、ということになったわけです。で、近角常観とアイン シュタインの会談があって。

アインシュタインが聞くわけです。仏教って一言で言うとなんだ、と。で、近角常観は「姨捨山」の話を始めて、まぁ親を息子が捨てる話なんですが、 帰ってこれないくらい遠くへ捨てにいくわけです。で、いざ親を置いて帰ろうとすると親の方は息子の心配をしている。「こんな遠くまで来たのだから、気をつけて帰るように」と。息子としてはこれはもう泣けるわけです。で、掟をやぶって連れて帰る。

これはどういうことかというと、 自分を捨てようという程の人間に対して、捨てられる側が心配をする、という。何も求めない愛情。信じる者は救われるということだけではなくて、信じな い者もふくめて気にかける、愛情をかけるというこれが仏教だ、と近角常観は説明するわけです。これはキリスト教とは違う。信じるないと地獄に落ちるんじゃないか、とか、そういう事ではない。仏教というのものは自分と敵対するものですら、自分を捨てゆくものですら、愛情をかける、ということを説明するわ けですね。これがアルバート・アインシュタインと近角常観の会談なわけです。建築とはだいぶ話がずれちゃいましたが。

MP
:いやー、いいですね! 私も少し本買って読もう。推薦図書をぜひぜひあげてくださいよー。鷲野さん。お客さんも事前に予習できるし〜。しかし、やっぱりすごいですね。そういう人がいたんですねー。

W:僕もデザインやってますから、デザイナーとしていろんなアートイベントのデザインだったり、グラフィックのデザインだったり、空間の演出とかいろいろやりますけど、やっぱり誰とやるかってすごく大きくて、そこの熱意のレベルによって、全然やる気が違ってくるんですよ。「あれ、お金ないじゃん?」みたいな事があったとしても、なんか知らないうちに盛り上がっていることもありますから。

その大きい事が、武田五一と近角常観に起こったという。大人物対大人物という。

MP
:あぁ、分かります。その感じ。でもそれがまた建築って長く残るものになったのが素晴らしいですね。

W
:そうですね。ひととき、求道会館はかなりボロボロになっちゃってたのを、今のオーナーたちが復活させたんですよ。いろいろと動かれて、公のお金も入っているみたいですけど、自分たちでも、家が一軒くらいたつくらいのお金をいれて、それだけの覚悟を持って作り替えたというのがすごいですね。ちなみに今の当主夫妻は二人とも建築家・・・だからそういうこともあるわけでしょう。建築への愛情が強いというか・・・。

MP
:そうなんですかー

W
:だから僕らもこれを大事に使って、単純に「面白い空間だね」ということだけではなくて、この空間の意味とか背後にあるストーリーとか、そこでしか奏でられない音、話もふくめて大事にしながら空間を使っていくということを通じて、皆がここを好きになってくれる。それが、またこの建物の寿命を延ばすことに繋がっていけばという密かな目論見があるわけです。

MP
:すごいわ、それ。めちゃくちゃ説得力ある


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「エクランドのポルスカNO.3」これも間違いなくやるだろうな〜。