映画「スティーブ・ジョブズ」を観ました

スティーブ、スティーブと騒いでいたら、友達が試写が当たった、といって試写会に誘われ行ってきました。映画「スティーブ・ジョブズ」

うーん、なんと言ったらいいでしょうか。これは微妙な映画です。まず映画として面白いかと言われれば、率直に言って非常につまらなかった。それは何故か… いろんなエピソードを詰め込もうとして散漫になっているように思えたから。

まず、例えばスティーブのこともマックのことも良く知らない人が「iPhone作った人らしいよ」と言って、この映画を見に行って楽しめるだろうかというと、そうではないと思う。すべてのエピソードが中途半端に表現され、会社運営の、取締役会vsスティーブみたいなところばかりが印象に残ってしまう。

キャッチコピーの「最低の男が最高の未来を創った」みたいなキャッチも好きじゃない。が、この映画に対しては正しいキャッチでもある。何故って、この映画には若い頃のスティーブをうんとエキセントリックで悪い男に書こう、書こうとしているように見えるからだ。なんとなくそういう意図が感じられるのだ。バイオグラフィー本を読んだ私の印象は、こんなに単純じゃなかった。

そもそも最初の方に出てくるアタリのゲームのバイトで5,000ドル稼ぎながら、相棒のウォズに750とウソを言ったエピソードをはじめとして,いろんなことが単純化されすぎている。バイオグラフィー本だともっと多角的に、いろんな人の証言を取りながら非常に興味深く紹介されているのに対して、映画では「あ、そうなの、このことについては、そういう風に映画にしちゃうのね」みたいな感じで、たった1つの視点を与えられるから、それがイライラする。もう少し一つ一つのセリフやエピソードや、すべてに深みが出ないものか。とにかく、この映画に出てくるエピソードのほとんどが広く知られた話であるがゆえに、いや、そうじゃないだろ、そこは…みたいな事ばかりが気になってしまう。

そして話としては、最後のエンディングになんらかのカタルシスがあるわけでもない。うーん、なんか中途半端。

しかし! それらすべてを置いておいても、すばらしい点がある。それは主演のアストン・カッチャーの歩き方! これがホント最高にすばらしい! まるでスティーブが乗り移ったみたいだ。最初冒頭での新作発表のために登壇するシーンで舞台にかけあがるのだが、そこからして、もうパーフェクト。(このシーンは予告編の中でも観れるので要チェック)

とにかく視線の動かし方、表情もすばらしいのだけど、あの歩き方は突出している。あれを観るだけでもこの映画、充分1,800円なり、1,000円なりを払う価値がある、と言っていいだろう。ただアシュトン、背がでかいのか… スティーブってこんなに大きくなかったよね、確か…(知っている人いたら教えて)。だから誰かと一緒に歩いていると,妙に違和感があった。でも一人で歩くシーンは本当に最高。だからかもしれないが、妙に一人で歩くシーンが多かったようにも感じた。

しかし! 何度かこのブログに書いているが、映画のキモは結局のところ脚本だと私はいつも思う。この映画は本がつまらなすぎた。もっとも、まだ関係者ほとんど生きているし、映画を作るのがそもそも早すぎるという事もあるかも。それになんといってもあのバイオ本が素晴らしすぎた。

でも同じ映画なのにFacebookのザッカバーグのことを描いた「ソーシャル・ネットワーク」は映画として最高の出来だと思ったので… うーん、なかなか難しいよね。もっともあっちは事実とはだいぶかけ離れている、って事らしいけど。

いずれにしても誘ってくれた友達には感謝。この映画、絶対に絶対に観たかった映画なので、試写で観れてとっても嬉しかった。

そしてスティーブとかアップルとか興味のない人。こっちの映画よりも「ロストインタビュー」の方を絶対に観た方がいい。あっちの方は映画としては三流だが、スティーブの魅力を感じたいんだったら絶対にあっちだ。なんといっても本物だし。

なお開演前にジョブズのお面が配られ、こんなことをやらされた。そしてどうやら来るジョブズの命日には、渋谷スクランブル交差点で秘蔵映像が流され、このジョブズの仮面を持った連中を集めようとしているらしい。映画っていうか、今度来日するペッテリもある意味、一緒だけど、プロモーションってホントにイベント化してきたよね。イベント=プロモーションっていうか。

PS ぜひ入れてもらいたかったエピソード
ウォズと結託して無料電話を作りバチカンまで電話したエピソード
養子であることを悩んでいたこと。もう少し丁寧に養父母とのことも書いてほしかった。
実はスティーブが一時ジョーン・バエズと付き合っていたというエピソード

…また思い出したら書く。っていうか、あのバイオ本、また読もう。

PPS あとウォズ役の人もよかった。ウォズについては本ものの映像をみたことがないので、なんともいえないけど、私が想像してた通りのウォズだった。