神本降臨!「昔日の客」を読みました

積ん読してた本を今,少しずつ切り崩してます。これらの山が終わるまで新しい本は買わないと決意。それにしても、やばいのは見えない積ん読本…Kindleの中にも大量に入っているけど、とりあえず見えるところから本の山をくずしていかねば。

ってなわけで、今ごろこれですか?と言われそうだけど、かなり話題になった夏葉社さんの「昔日の客」。これはホントに素晴らしい本です。よく復刊したよなー。

夏葉社の島田さんはアルテスの鈴木さんのご紹介でトークショウを見に行って以来、すっかりファンになっちゃった。本そのものと同じで、熱意の感じられる素敵な方でしたよ。でもこういう本を本当に愛する人の出す本が評価されているってのはホント嬉しいよね。

夏葉社さんはたった一人でやってる出版社。ウチも一人でやってるプロモーターだけど、いいよね。一人でやってるといいのは、やることがブレないんだよ。人を雇うためにやりたくないプロジェクトをやらなくても済む。もちろん会社で雇用を生み出す事は、イコール大きな社会貢献であるわけだけどね。でも、そうね、私は一人の素晴らしさを知っている。少なくとも現場のスポット以外で人を雇う予定は今もこれからも絶対にない。だから島田さんのやり方にはとても共感を覚えるし、島田さんはとてもピュアな気持ちで本を愛してらっしゃるのが分かる。

古本屋の親父の日常を書いたエッセイ。なんかいい時代だったよなぁ…みたいな郷愁も感じられる。今こんな古本屋は生き残って行けないだろう。

とにかく装丁が美しい。写真からも伝わってくるでしょ? うーん、でも実は私は「物」に拘ることが出来ないんだよな。例えばウチで、すっごい素敵な装丁のCDでも出して数ヶ月かけて売るか…とも思わなくもないが、うーん、なんか違うよな、と思ってしまうんだよね。ただこういうプロジェクトのすばらしさってのは分かっているつもりだ。いつだったかラヤトンのCDを絵本みたいにして売ってる会社の方のお話しも非常に面白かったが。

とにかくこの本、1つ1つのエッセイも短いから読んでいてまるで苦にならない…というか読み終わるのが惜しくてね…。お風呂の中で毎日少しずつ読んでいたのだけど、とにかく素敵な時間だった。もう一度、そして何度でも読みたいなと思える本に久しぶりに出合った。

しかしこういう親父が実際自分の近くにいたとすれば、ものすごく面倒くさく、うっとおしくあるに違いない、とも思うのだ。ロマンチックな男というのは非常に面倒くさく、うっとおしい。ここにも以前書いたが、現実を直視しない男の妄想が戦争を起こしてきたと私は思っている。でも素晴らしい芸術というのも実は男が生み出したりもしていることも私は認めているわけで、現実を見て合理的に行きたい女にはそれが出来ない。というわけで、これは親父の世界の金字塔でもある。本としては素晴らしすぎる。