映画「HUNGER ハンガー」を観ました

 すごかった。すごいパワフルな映画ですよ、これは。「HUNGER/ハンガー」

まぁビックリ。81年の北アイルランドの刑務所に収監されたIRA政治犯たちの物語。最初は監守の人たちがテロの恐怖におびえるような生活が映し出されたり、新しいIRAのメンバーが牢獄にやってくるところとか、その牢獄での日常的な暴力シーンなどが次々に映し出されて…なんというかいたたまれなくなります。彼らは時のサッチャー政権に政治犯としての権利を奪われ、それに反抗するために、あれこれ抵抗を試みる。いや、それはもうすごいのひと言。そして最終的にボビー・サンズを中心にハンガーストライキに打って出る。

身体が衰弱し死んで行く様子は、ものすごい。でもなんだか…とても綺麗なようにも見えます。不思議な感覚。

スティーブ・マックイーン監督がオスカーを取ったことで東京でも限定上映となったそうだけど、いや,確かにこの監督はすごい。演出はすごい。なんだかやたら長回しが多いんです。そして、かなり汚いものを描写しているのに、綺麗でもある。いやいや、すごいものを観ました。

特にサンズが牧師さんにいろいろ告白するシーンがすごい。これも長回し。20分くらいある。牧師さんの方も圧巻。セリフが圧倒的に少ないこの映画で心に残るシーンです。












それにしても1981年ですよ… 私が最初にイギリスに行ったのが1984年だったかな。アイルランドに初めて行ったのも1991年… だからそんなに前の話じゃない。こんなことが公然と行われていただなんて、まったく信じられません。サンズは牢獄にいながらにして議員に当選した。それなのにサッチャー政権は彼を見捨てて要求には答えず、サンズを含む合計10名の人が死んでいったわけです。

いや、でも監督はこのハンガーストライキを美化しようというわけではない…と言っているらしい。ただボビー・サンズの事が忘れ去られたくない、という事をインタビューで答えていたそうです。当時11歳だった監督はテレビでサンズがどんどん痩せて行く様子も観ていたのだそうです。でも彼が必死に訴えても結局世界は何も変わらなかった。

信念のために死ぬ? そんな綺麗事ではない。今回この映画の感想みたいなものをググっていたら「人間が人間であることをやめた」みたいな言い方をしていた人がいた。私もそれは思った。なんかこういう行為が人間らしいとはとても思えないんだよね。

先日の福岡センセの本じゃないけど、生物であることも人間らしくあることの一部だと思う。それを思うにつけ…これは…ちょっとないよな、と思う。いや生物としての欲求とか、そういう…事ではないな。うーん、ただやっぱり判断力とか考え方とか、いろんな事がエクストリームにもどっかへ飛んで行ってしまったとしか思えない。一方で死にかけた主人公が子供のころを思い出すシーンは…すごく綺麗で…それがとても良かった。

イメージフォーラムで4月11日まで上映。平日の昼間だというのに結構混んでましたよ。

そうそう、感想ググってたら、さすがナオコガイドさん、2008年にもうこの映画を観て感想をアップされている… いずれにしてもパワフルな映画です。絶対に観たほうがいい。