ツアー終わって、ほっ… ペッテリ・サリオラを総括

いやーーー 今回も最高でした。ペッテリ。ほんとにすごいね。音楽も素晴らしかったけどホントにいい子だった。そして初めてウチで作った、ちゃんとした公演…南青山マンダラの公演は、本当にスペシャルだった。しかし今年はウチは当たり年かもしれない。ウチのやるライブ、すべてクオリティが最高に良い! 本当に素晴らしいミュージシャンに恵まれて、ホントにウチは幸せな音楽事務所だと思う。

それにしても若い子はいいねぇ… ホントに若い子と仕事をするのはいい。すべてを吸収し、彼らはどんどん前進していく。経験がどんどん財産として蓄積されていく。それがホントに側でみていて嬉しい。だから何でも経験させてあげたくなる。まったくもって、この仕事はいい。66の爺さんから29の若者まで、一緒に仕事をする事が出来るから。

そういや66の爺さんは、どうしているのだろうか…70前にもう一度来日してほしいもんだが…

ペッテリの前回の来日はいわゆるプロモーション来日だった。なので取材で盛りだくさんだった。最後にショーケースとして公演を打ったけど、それは無料だったし、基本はプロモ来日。ショーケースは200名ほどのお客さんが来てくれたが、なんといっても無料だったからあまり筋肉にはなっていない。

で、今回はそれとはまったく違うワークショップや学校イベントや教育施設イベント、そして他のバンドのコンサートの前座…ということで埋め尽くした日程だった。こうやって地道にファンベースを作りたい、というのが目的の来日だった。で、最後の最後に南青山マンダラで公演をやろう、と。会場を南青山マンダラにしたのは、ペッテリでは、大きめの会場を埋めるほどの動員が難しい、と考えたからだ。ショーケースに来たお客さんは200名くらいいたけど、そのうち、どれだけ有料の公演に戻って来てくれるかは分からない。ちなみに音楽業界では無料で見せたお客さんは二度と戻ってこないという通説まである。(同理由で「熱狂の日」などは結構やり玉にあがられることも多い)

加えて以前の関係者にも話を聞いてみる機会があったのだが、そこでもペッテリ単独ではお客さんを集めるのは難しいだろう、と言われた。いやいや、その人を攻めているのではない。リスクを取って単独公演を打つことは誰にでも出来る事ではないからだ。無名のミュージシャンの公演制作のリスクは、私も誰よりも分かっているつもりだ。特に海外から呼ぶともなれば、会場費どころではない。たった一人とはいえ飛行機代、ホテル代、ビザ取得代…とにかくリスクが高い。

でもその結果、ペッテリの過去の公演記録/実績リストをみて見れば、いつも誰かが前座とかダブル・ビルに入ったりしていて本人の動員実力が計れない結果となっているんだよね。それを思うとホントにライブは、どんなにつらくとも共演とかに安直に頼ってはいけないよな、と思う。自分の足でたって、自分でチケットを売らないと分からないな、と。つまり小さなリスクでも取らないところには筋肉はつかない。

まぁ、いずれにせよ、いろんな判断のもとに、小さめの会場にしたのだが、それは私のミスだった。南青山マンダラは実際お客が40人でも充分見栄えが作れる会場だ。空席の多い会場というものほど辛いものはないから公演をなりたたせることを一番大事に考えての結論だった。で、まぁ実力で30、40枚チケットを売って、そして、例えばこっちでワークショップをやって5枚、あっちでイベントやって3枚、kanの前座やって3枚…とか少しずつチケットをさばいてなんとか公演をなりたたせようと思っていたのだった。

だからすべてのイベントが始まるうんと前に、今回あまりに早くソールドアウトになってしまって、あんなに素晴らしい公演をしてくれたペッテリと、公演に来たかったのにチケットを買えなかったお客さんには申し訳ないことをしたと思う。これは明らかに私の読み間違いである。ごめんなさい。

それにしても本人がこれだけ協力的だと何でもやってみようと気持ちになる。ペッテリは辛い仕事でも「チャンスをありがとう」といって、手を抜かないで一所懸命やってくれる。実はすでに来年の後半に再来日を考えていたのだけど、そんなに長く待たず、早めに強行してみようかな、という気持ちに今はなっている。ペッテリだったら半年に1回来てもいいんじゃないか。外タレ、毎年来日動員目減り説…外国人タレントは毎年呼ぶと動員が落ちる…という通説も、業界にはあったりするのであるが…(笑)

とはいえKANに対しても思ったんだけど、実はミュージシャンの良い時期は短い。そして時代はどんどん厳しくなる。だからやっぱりいろいろ考えるんだよね…

それにしてもペッテリには素敵な経験をさせてもらった。何でも手をぬかず頑張るペッテリには何をやらせても勇気をもらえるのだけど、そのハイライト、それは日永さんを訪ねたことだ。それについての素敵なレポートはここにある。日永さん、林田さん、ありがとうございました。ちなみにここに書いておくけど、話をきいたKANの連中も「俺も行きたい」と騒いだ事は、私をとっても嬉しくさせた。ウチのミュージシャンたちは、みんな音楽のことをとっても大切に思っている。日永さんに自分の音楽を聞いてもらえた事は、若いペッテリのこれからをガッツリと支えてくれるだろう。ミュージシャンとしてこれほどまでに音楽が必要とされている場に行けるということがどんなに大切なことか。私もそんな素晴らしい現場に立ち会えて、本当に嬉しかった。またそのあとに、ちょっとした具体的エピソードもあり(それはここにはあえて書かないけど)、ペッテリはわざわざそれを私に話してくれた。日永さんに出会えて,彼がそんな風に考えたんだということが、私をまたとっても嬉しくさせた。

一方で、音楽を平気でインダストリーと呼んでしまう強者もいる。そういう厳しい世界であることも事実だ。でもせめて自分はなんか音楽の美しさみたいなのを感じられるこっち側の世界に留まりたいな、と思っているのだ、私は。…ってヒット出せない負け惜しみかもしれないが。もちろんあまりにマニアックに引きこもってしまったら、それはそれでダメダメなわけで、音楽インダストリーや音楽ビジネスの連中を批判をするのではなく、良いところは学びながら自分のバランスを取っていく…それに尽きるのだと思う。潔癖性になってしまっては、いけない。

間違いなく今後音楽業界はすごく変わっていく。大きな世界的なヒットを出してくる、それこそアメリカ、スウェーデンの勝ち組の連中。いろんな仕掛人。Britain's got talentの審査員してるあのおっさん、とか(笑) あとはウチらみたいに好きな事を自由にインディペンデントにやっていく連中。中途半端な真ん中の連中はすべてゴソっとなくなっていくだろう。それはそれで良いことかもしれない。



武蔵野プレイスさんの力の入ったディスプレイ。ありがとうございました〜
日永さんにいただいたお花。ペッテリのホテルの部屋をしばらくにぎわせた後、ウチで引き取りました。まだ元気に咲いていて、ウチのオフィスを和ませてくれています。