スティーヴン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」を読みました

こんなメジャーの本、今頃読んでるのは私くらいだろう。2週間くらい前に読み終わっていたのだが、感想を書く時間がなく今になってしまった。

映画「ショーシャンクの空に」の原作で春夏秋冬の4部作の「春」である「刑務所のリタ・ヘイワース」。無実の罪で投獄され、それでも希望を捨てなかった男の感動の物語。

なるほどねー。スティーヴン・キングなんて初めて読んだかも。これは読みやすい。普段あまりメインストリームのこういう本を読んだことない私なのだが、たまに読むとその読みやすさに感動する。

映画は実は見てない。何故読んだかというと豊崎社長の書評を読んで読みたく思ったからだ。社長の書評はマジでやばい。ついつい説得させられてしまう。

94年の映画か。タイトルは知ってたけど、当時の私は映画はみない人だった。最近でこそかなり見るようになったが、20代、30代の私といったら仕事マックス度は今以上で時間的余裕がまったくなかったからだ。仕事が多い…ってのとは違うな。自分がやりたいことがもう目の前に山のようにあったもんだから、映画は飛行機の中でしか見ないと公言してたくらい。最近でこそ自分の企画に深みをもたせたり、いろいろアイディアを練るのにいろんなものに触れた方がいい、とは思うようになったが、そんなのは、ここ5、6年のこと。当時はそんな余裕はなかった。おかげで非常に良いものをたくさん見逃している可能性は高い。

というわけで、この映画は見てない。が、この本を映画にするとは非常に難しいのではないか、とも思った。これは非常に味わい深い素晴らしい話だ。読むことで、力がヒシヒシ伝わってくる。

テーマはいろんな事を言う人をネット上で発見するが、「希望」とか「愛」とか。私は究極的にはやはり「自由」だと思う。そして良く読めば、これが単なる諦めなかった男のサクセスストーリーというだけではなく長期受刑者の問題… あまりに長く刑務所にいると、人生に対してやる気を失い,自分で自分の人生を切り開こうとは思わなくなってしまう、というもの。人間は簡単に「自由」を放棄してしまう。そんなバカな動物だ。「自由からの逃走」だよね、まさに。そして、ただ生きているだけになってしまう、という事。一方で自由とは「あまりに興奮しているおかげで、手がふるえて、鉛筆がまともに握れなく」(文章より)なるようなものなのだ。

ちなみに「ゴールデンボーイ」に収録されている物語の続き「夏」編は、これに反するような希望もへったくれもない暗い話だそうで、おそらくスティーヴン・キングとしては、すべての4作品を全部読んでちゃんと完結した一つの物語にしようとしているのではないか、と思う。だから続きをちゃんと読まなくちゃ。

多少ネタバレになるが、こちらを紹介したい。こちらが映画のエンディングらしい。Shawshank Redeptionでググれば動画はいくらでも出て来て、もう私もなんか映画も見た気になっているが(笑)、このエンディングは本にかなり忠実だ。文章をそのまま読んでいるナレーション。そして… こんな青空。

I hope I can make it across the border. 
I hope to see my friend, and shake his hand. 
I hope the Pacific is as blue as it has been in my dreams. 
I hope.

どうかうまく国境を越えられますように。
どうか親友に再会して、やつと握手ができますように。
どうか太平洋が夢の中とおなじような濃いブルーでありますように。
それがおれの希望だ。
(浅倉久志:訳)

本では赤毛のアイリッシュという設定の役を黒人俳優のモーガン・フリーマンが演じている。まぁ、こんな絵だったら、原作のファンの人も、まぁ納得しちゃうのかな。





PS
ネタバレ、ネタバレって言うけど、別にネタが欲しくて映画みるわけじゃないんだからんさ。ネタがほしくて映画を見る人に映画や本の本当の素晴らしさが分かるわけないし、ネタが分かったとたん見る気が失せる人は、たとえ見たところで本当の良さは分からないよ。

PPS
まぁ、でもやっぱこれを機会にスティーヴン・キングもっと読もう!とかならないところがあまのじゃくな私なのであって…(笑)