「Down the crooked road〜Mary Black autobiography」を読みました

昨日までムーンサファリの公演のお手伝いでアップアップだったのだけど、本当に公演の内容が素晴らしかったので、疲れもふっとぶわ…。本当に音楽の力は素晴らしい。新しく出来たチーム、新しく出会ったミュージシャン。いろんなことが有機的に変化して行く中で、自分がそこに関われるのは本当に嬉しいとだと思う。こういう喜びって音楽の仕事ならではの事だと思う。…いや、違うな。好きなことを仕事にしている人は、誰でもこういう臨場感を仕事から感じれるんじゃないかな。でもそれが音楽の仕事においては、とくに顕著だと思う。今回もとても楽しかった。

公演を作るのが初めてだという後輩スタッフは、彼女の歳の頃の私よりよっぽど優秀で、私の言うことを真剣に聞いてくれる。すごいよ。責任感が強くて頭の良い子は、今は大変でも、いつか必ず自信を手にいれられる。私ぐらいの歳になると、こういうパターンが時々あらわれてくるから、いいんだわ。ウチは誰を雇っているわけでもなく、私は子供がいるわけじゃないんだけど、なんというか自分の「働きマン遺伝子」みたいなものをついでくれる人(特に女の子)が時々現れるのが、最近は感じられてとても嬉しいんだ。ここんとこ、そんな風に感じられる出会いが、数人立て続けにあった。

ミュージシャンのことを真剣に思うスタッフよ。音楽のこういう力を忘れちゃだめだ、と強く思う。残念ながら日々の仕事は過酷で誰もが「売れない、売れない」と自分の仕事が上手くいかないことを誰かのせいにするのが今の音楽業界なんだよね。でも、それじゃ世の中だめなんだよ。いいバンドってのは、いい音楽ってのは、それじゃダメだ、自分で動け、という事を思い出させてくれる。

そして信頼関係。バンドは最高の演奏を見せてくれた。相手を信頼すること、そして信頼してもらうこと。それによって少しずつ、遠慮がちに重なりあっていた何かが、どんどんお互いに侵食しあって、最後にはがっつり絡み合って行く。そのヴァイブレーションを見るのは本当に嬉しい。そこを知ってほしいんだよね。ただ「任せる」「任せない」とかそういう事じゃなくって、信頼関係。話さなくても分る、その感じ。確認しなくても分る、この感じ。この感じは感じた人にしか分らないもんだけど。それを仕事で是非体験してほしい。

あ〜、今回もアドレナリンがたくさん出た。ライブの現場はホントにいいなぁ。おかげ私はその場にいただけで大したことやってないのに、ぐったり。そして私も早く自分のバンドに会いたくなっちゃったよ。まぁ、明後日会うけどさ(笑) 明日の飛行機はすでにチェックイン済みだが、果たしてあと15時間くらいで成田に向えるんだろうか。

さて、そんな「信頼」の気持ちを20代の頃の私に一番最初に教えてくれたのは、このミュージシャンでした。メアリー・ブラック。彼女がくれた「信頼の遺伝子」はそうやって、日本でもつながっていく。世界中に広がっていく。彼女と仕事をし始めた頃の私は、仕事はすればするほど損をするもんだとばかり思ってた。でも彼女と出会って分った。もう自分を抑えることはないんだ、こころゆくまで愛情をそそいでいいんだ、って。

彼女に最初にあったころの私はホントにペーペーでした。思い出しても恥ずかしすぎる…(笑) 彼女がいたから私はこの仕事をはじめ、彼女の息子まで一緒に仕事をし、そして彼女はこの5月に日本のツアーから幸せに引退して行った。その彼女のオートバイオグラフィが最近アイルランドでリリースされ、それをほぼ一気読みしてしまったのが数日前。

日本のことも書かれていて、空港で会ったヨーコはまだ20歳で(すみません、でも24歳だと思うよ、メアリーに最初に会った時…)チビの私の肩くらいしか背がないんだ、なんて書かれている。メアリーはチビだが、私はもっとチビだ。そして大きくページが裂かれているのは、日本のファンの素晴らしさだ。音楽が終わった時、他の国ならすぐに拍手が来るのに日本では最後の一音が消えるまでみんなが息をひそめて聞いてるんだ、と言っている。そして一瞬間があってから拍手がくるんだよ、とメアリーは説明している。

そして終演後のサイン会は長蛇の列で、そこで会うファンの人はみんなメアリーの3人の子供の名前をすべて知っており、子供それぞれにプレゼントを持ってきてくれるんだ、とも。日本での写真も載っていて、オイラの若い頃、当時のレーベル担当F本さん、そして通訳でご活躍中の染谷和美さんや、現在某大レーベルの女宣伝部長となったM林も嬉しそうな顔をして写っている。懐かしすぎるよ。


でもすごいなぁ、と特に思ったのは貧しいけど幸せいっぱいの子供時代だ。5人兄弟の真ん中のメアリーはお兄ちゃんには勇敢に戦いをいどむお転婆娘。お兄ちゃん、流血!?みたいなシーンも多数。

そしてティーンエイジャー、始めてのボーイフレンド。そして今の旦那さんとの初デート。結婚前に実は一度離れている時期があったことなど…もういろんなことがあれこれ感動的すぎる。特に印象的だったのは実際に「恋に落ちる」シーン。もともと旦那のジョーはメアリーの親友のお気に入りだった。親友に頼まれてちょくちょくジョーの仕事場にのぞきにいったりしていたんだって。

ところが、ある日…この日のことをメアリーは昨日のことのように覚えているそうだけど…パブのテーブルでジョーとその友達と結構多数の友人と一緒に飲んでいた時、そのうちの誰かが、ちょっと面白い事を言ってメアリーは声をたてて大笑いしたんだって。で、その瞬間,テーブルの反対側をみたら、ジョーもこっちを見て笑っていた。それでその瞬間、恋に落ちたんだって。すごいよね! 素敵すぎる! と、まぁ、そんなところも読みながら10回くらい泣いたわ、ホント。

上はアイルランドの本屋さんでの平積み状態。私は電子書籍とハードカバー本と両方で買ったけど、やっぱり本はいいもんですな。でも電子書籍はすごく便利で、言葉をすぐweb辞書で引けるのが良い。

著者サイン会ですよ〜

そして笑ったのが、メアリーのお母さんが「自分の孫の中で一番好きなのはダニー」と公言していてはばからなかった、ということ。自分の娘や息子には誰が好きか、なんて絶対に言わなかったメアリーのお母さんだけど、16人だか何人だかいる孫たちの中ではダニーが一番お気にだっただって。なんか笑える!

写真はメアリー一家。左から次男ダニー、旦那様のジョー、メアリー、娘ローシンに、長男コナー。メアリーの家はメアリーが一番チビなんだ。いいねぇ。ほんとに幸せそう。

メアリー、本を書いてくれてありがとう。この本は働く女子すべての身方になってくれる。さ〜て、出張中にもう一度読むか。