ATELIER MUJI 石川直樹さんのトークイベント「ソングラインをたどる旅」

今日は有楽町の無印良品にあるATELIER MUJI「地球の音楽展」でカメラマンの石川直樹さんのお話を伺いに行ってきました。

「地球の音楽展」は無印良品がスタートしたBGM+という新レーベルに寄せて、このレーベルの音源を紹介しつつ、生活と音楽ということに焦点をあてた展示。私がコーディネイトをお手伝いしたFLOOKシーリスも参加させていただいているので、トークショウにも一度顔を出さなくちゃと思っていたのだけど、年末年始にかけてあれこれ忙しく今日やっと参加できたのだった。

そんなノリだったので、私は石川さんのことは良く知らなくて、前日に速攻でザックリとお名前をネットでググって一夜漬けで勉強した程度。でもやっぱりお話しを聞いてみないとあれこれ自分の中に入ってこないね。本当にすごく刺激的で面白かった! 

以下は私がこのトークショウで印象に残ったところをメモった内容をご紹介。私が勝手に理解した事なので、勘違いや理解の仕方やメモの間違いなどがあるかもしれないので、ご了承を。

まずタイトルにある「ソングライン」ってご存知ですか? オーストラリアの先住民アボリジニの文化に残る、伝承歌、伝承地図のこと。人々の生活の中で受け継がれて来た目に見えない道のことを言うんだって。小さなランドマークとか、神話みたなもので構成されていて、それが音楽でありかつ立体的な地図となっている、という。すごいね。で、こんなページも見つけたよ。  つまりその歌の中に「ここは危ないよ」とか「ここに食べ物があるよ」とかそういう情報がたくさん詰まっている、ってわけ。

ちょっと川内有緒の「バウルを探して」を思い出したりもした。そんな風にもう何年も前から人間が生きて行くための情報を運ぶため、ずっと人々の間で伝わる音楽なのだ。

しかしこうして見ると、ポピュラー音楽なんかはせいぜい70年くらい? ヨーロッパの伝統音楽とかだと私みたいな輩も異国でプロモーションに係わり300年くらい続いているものなわけなんだけど、こういうソングラインみたいなものって、きっとそれよりすごい…10,000年単位で続いてるんだろうなーと思った。

石川さんは「ポーラー」って写真も出していてそれは北極圏、国のボーダーもない世界。そしてハワイやミクロネシアなど… こっちでは星の航海術(スターナビゲーション)というのが存在している。例えば私たちが星とか見ても何にも分らないんだけど、現地の人たちは星を見るとそれを情報に変化させることができる…つまり自分たちだけの地図にすることが出来るんだって。また「コロナ」って写真集ではポリネシアン・トライアングルを紹介していて、それもそこに立った者にしか分らない地図なんだって。

つまり極めてプラクティカルなんだよね。石川さんいわく「アートって、ギリシャ語のアルス=技術って言葉から来ている」それは生きるための技術であり、それこそが芸術だと。例えばお葬式の音楽、生きる為に必要なもの。人間の役にたたなければアートじゃない。例えば星の航海術なんかレベルの高いアート。芸術の極みだと思う、とおっしゃってました。

例えば石川さんが会った盲目の老人はStar Songといって1時間半くらいの歌をソラで歌えるんだって。その歌によって必要な情報を思い出す。歌が地図になっているんだって。

今、石川さんは大友良英さんたちとそういう秘境の音楽をめぐる旅のプロジェクトを進めていて、それは将来的に本になるのか展示になるのか、分らないのだけど、水面かであれこれ面白いことが進行している様子。うーん、楽しみ。そんな話も石川さんのブログで読める。

お話のあとに、参加者からの質問に答えるコーナーもあって、旅の中で無音という状態を経験したことがありますかという質問に、熱気球で8,000メートルとかあがるとそこは無音なんですよ、と言ってらした。時速200kmくらいで移動してて、時々気球をあっためるバナーの音がするんだけど、それが消えるとまたまったくの無音になる。風の音とか全然しない。で、雲の上なんでひたすら青く、チリひとつもないから遠近感が分らない。そういう状態なんだって。すごいね!

あとエベレストの山頂では…自分の呼吸の音しか聞こえないんだって。足を踏みしめる音とかも頭が帽子やフードで覆われているから遠くてまったく聞こえない。ひたすら自分の呼吸が聞こえて、それによって例えば息が早くなりすぎると「やばい、やばい」って行動を制御したりするんだって。なんか想像を絶する…

あと現地の人と仲良くなるコツは?という話に「別に仲良くならなくてもいいです」とのこと。あくまで自然体でいるのが大事。自分はあくまで異邦人で、その場ではマイノリティだと。向こうにデカいものがあって、そこに入らせてもらってる、という感覚…旅はそういうもんでしょ、と石川さん。なるほどね。だから無理しなくていい。不安にならなくていい。そんな風におっしゃってました。

あと「食べ物の写真を上手に撮るには?」というバカ質問をしたのは、この私です。これ私、写真撮る人にはみんな聞いているんだ(笑) だって石川さんだって食べ物の写真集出しているのを見たし(笑)ただしAmazonで表紙だけ見ただけだから中味みてないけど… すみませんっっ! で、石川さんの答えがいい。「これは美味しい!!」って思って自分の反応に素直に取りなさい、とのこと。例えば暗いレストランで不味そうに撮れても「自分が美味しかったら美味しい」って思っていいんだって。っていうか、石川さん、「食べられるだけありがたいんです」…ってホントそうだよね。はい。

それにしても、普段、伝統音楽シーンからみたポッピュラー音楽は…とか思ってたけど、ソングラインとかスターナビゲーションの前ではヨーロッパの器楽曲とかも、まだまだ若造なのであった。もちろん人間の生活に重要であるのは当然なんだけど、せいぜい冠婚葬祭で、まだまだ命に関わるレベルのものではないし。それにしても常に音楽って人間の歴史と共にあるんだなって本当に思う。いや〜、刺激的でした。

この地球の音楽展、展示は3月まで続くけどトークショウは次回ピーター・バラカンさんで終了。ちなみにこちらはもう申込者いっぱいですでに閉め切った様子です。残念。

石川さんがご紹介してらしたブルース・チャトウインの「ソングライン」、そして石川さんの本&写真集はこちら。この食べ物の写真集、ゲットしてみたい…石川さんは「自分は味音痴だ」と言ってらしたが…




ところで…無印良品でついに買っちまった…FOUND MUJI(有楽町MUJIの3階、表参道にもお店があります)のデンマーク製の水色のティーポット。あぁ、素敵すぎる。

私はホントに普段、物を買わない主義なんだが、こればっかりは惚れてしもた… で、ティーポットの棚の前で悩むこと5回くらい。今日、ついに買ってしまった。5,000円もした。5,000円、焼肉や寿司など食べ物に払うのはまったく問題ないのだが、物に払うのは…滅多にない。でも本当に素敵なんだもの!

ちなみに写真の手前の藍色のティーポットは長年使っている英国製のもの。これは馴染んでいるのですごく愛着があるのだが、明日からはデンマーク製と行くか!?

あと有楽町MUJIの3階では、私がコーディネイトをお手伝いしたFLOOKのCDとシーリスのCDを含むBGM+の試聴が出来るコーナーが、なんと2ケ所も設置されていました。家電コーナーと家具のエリアと…すごい。なんかメジャーな感じ。皆さんも、良かったらぜひ覗いてみてください。ティーポットも素敵だから。あとBGM+のCDはネットストアでも買えます。フルックがこちら。シーリスはここ。

あと石川直樹さんは、このあと1月下旬から横浜あざみ野にてNEO MAPというコンセプトで写真展があるそう。それからワタリウムではあの奈良美智さんとの企画展も。奈良さん、写真撮ってるそうです(笑)。こちらもぜひチェキラしてみてください。