ピーター・バラカンさんTalk show at ATELIER MUJI


昨日はATELIER MUJIピーター・バラカンさんのトークショウにお邪魔してきました。

無印良品ではBGM+という新しいワールドミュージックのレーベルがスタートしたんですが、それにともない「地球の音楽展」という展示がATELIER MUJIで行われており、そこで音楽にちなんだTalk showが連日行われているのです。最終回は我らがピーター・バラカンさん。下記はセットリストです。どれも素敵な曲ばかり。

なお曲に関するコメントは私が録音もせずにメモったものばかりですので、間違いや勘違いなどあるかもしれません。なので責任は野崎にあります。参加されてた方で何かご指摘があれば是非よろしく。

今日のタイトルは「FOOD FOR THE SOUL」。よく「あなたにとって音楽とは?」と聞かれることが多いというバラカンさん。そういうときは「音楽は心の糧」と答えているそうです。音楽がないという生活は考えられない。で、今日はピーターさんのiTunes、9,358曲の中からスペシャルなプレイリストをご紹介します、とのこと。

まず、バラカンさんは数日前にベッカ・スティーブンス・バンドというニューヨークの女性シンガーの公演をコットンクラブで観たそうです(「このあと、急げば近いですから最終日の2部にまにあいますよ」とのことでした)。彼女はすごくヘンな曲…ヘンなコード進行、不思議な曲を書くひとで、ヘンなんだけど、それがめちゃくちゃ気持ちがよい、という。その彼女がアンコールで歌ったというジョニ・ミッチェルの曲から。

M1.  Joni Mitchell - Help me
この曲以降、ジョニは作風がかわりはじめて「もう売れなくていい」って境地にたっしたのかも、とピーターさん。でもこういう曲が今、発表されたとして…今のラジオでかかるかなぁ…僕はかけますけどね。でも耳に入れば好きになれる曲だと思う…と。ヘンな曲でなぜこんな風に気持ちよく聞こえるのかが、本当に不思議。(このあと、実は私はピーターさんに言われるまでもなくベッカ・スティーブンス・バンド聞きに行ったんですが、ホントにそんな曲ばかりでした。良かった!)

そして次はLAにグラミー賞の仕事かなにかで行ったときにレコード店で聞いたというこの曲。

M2.  Madeleine Peyrou - Don't Wait Too Long
演奏もいいでしょう?とピーターさん。いまだに大好きなレコード。90年代半ばのリリースで、これが彼女の2作目。フランスの路上で歌っていたという経歴。ベッカもそうだけどギターも上手で、リズム感もよくて、弾くコードがおもしろい、とのこと。ビリー・ホリディに比較されることが多い。確かに似てますよね、と。

M3.  Billie Holiday - Body and Soul
で、そのビリー・ホリディ。すごい。完璧な曲。目立たないけど途中のトランペットソロも完璧。40、41年くらいの演奏。この時期のJAZZバンドは丸みがあってギャーっとくる戦後に出てくるようなアグレッシブなアレンジが少ない。10歳くらいのときお母さんが好きでよく聞いていた。自分の部屋がなかったし、プレイヤーも当然一家に1台しかなかったから。

M4.  Coleman Hawkins - Body and Soul
1939年のサックス奏者のトラック。わりとゆったりしたテンポ。ちょうどミュージシャンの組合がストライキを呼びかけ1年レコーディングがなかった時代だったそうで、モダンジャズが生まれようとする時期の貴重な録音があまり残っていない、とのこと。戦争が始まった年ですね…

M5.  Cassandra Wilson - I'm so lonesome I could cry 
今、もう60にはなってるかも、というカサンドラ・ウィルソンの大傑作「New moon daughter」ピアノを使わない不思議なジャズ・ヴォーカル。ハンク・ウイリアムズのカバー。ピーターさんは子供の頃、ロック少年だったのでハンク・ウイリアムズのようなカントリーはあまり好きではなかった。でも歌詞も面白いし大人になって今はかなり好きなのだそう。カサンドラ・ウイルソンのこのアルバムはU2のカバーや自作曲、そして「マンキーズ」(猿はマンキですからね、皆さん/笑)のカバーなどが収録されている。

M6.  Concha Buika - Mi Niña Lola
次はスペイン人。マヨルカ島出身の女性ヴォーカル。お父さんとお母さんはギニアから来ているというアフリカ系。一度来日して品川プリンスのホールでやったかな…「たまらないでしょ〜」とピーターさん。変わり種のフラメンコみたいな曲。変わったコードが多いんですよ、とのこと。

M7.  Jerry Gonzalez (y Los Piratas Del Flamenco) - Monk's Soniquete
次はニューヨークの人で、フランメンコの編成を使ったジャズだそうです。ラテン・ジャズ。モンクの大ファンでよく取り上げているそう。芝浦のJapan TimesのビルにInter FMがあった時によくリスナーから電話がかかってきていたのだけど、その当時、リスナーに教えてもらった曲。10年くらい前でアマゾンはすでにあったけど、スペイン盤しかなくてCDを手に入れるのが大変だった。NY在住の彼がスペインのジプシー文化を取り入れてスペインに半年くらい留まり制作したもの。

M8.  アーティスト名 ハビエル・ルイパ?? Isala Mujeres
スペイン盤しかなくてこれも手に入れるのに苦労したそう。ピーターさんの大尊敬するDJのチャーリー・ギレットさんが好きでよくかけていた曲。ピーターさんはチャーリーさんの番組が大好きで、日本に来てからもお母さんに彼の番組を録音してもらい日本までカセットテープを送ってもらっていたのだそう。この曲については2003年くらいにスペインのセビリアでWOMEX(ワールドミュージックの見本市)があった時にCDをやっと手にいれたんだって。名古屋の万博で来日。東京にも一度来てCAYで公演を行った。

M9. Chris Thile - Bach Sonata
次はなんとクリス・シーリ!! 嬉しい。バラカンさんも好きなんだ!? で、バッハのソナタです。これ名盤なんで私も大お薦め。もともとヴァイオリンの為の曲なんだけど、マンドリンはチューニングが一緒だから弾くのに無理がないのだそうです。それにしても1音、1音が正確で安定していてすごいよね、クリスは…

M10. Aurele Nicloet - Bach Orchestral Suite No.2
ピーターさんはバッハが大好きで、疲れて何も考えたくないときに家でバッハを聞くと頭の細胞が整列されるような気がしていいんだそうです。なんか分かる…(笑)バッハの管弦組曲2番。フルートの人です。テンポの遅いのが続き、その先にこれがくるから「やった!」ってパワーがある…とのこと。

M11.  Toumani Diabate - Jarabi
そして次はコラ。世襲性でコラを学ぶ家系に生まれたトゥマニ。子供のころ小児麻痺をわずらいお父さんには楽器を教えてもらえなかった。なので独学で学習。同時にジミ・ヘンドリックスやマイルス・デイビスを聞きながら育ったそうで… 本当に1人でやってんの?というすごい演奏。圧巻です。

M12.   Coolfin featuring  Mairead Ni Dhomhnail - Siuil A Run
そして! なんと私も数日前にやっとみた「ジミー、野を駆ける伝説(Jimmy's Hall)」でも印象的だったアイルランドの伝統歌「シューラルー」をクールフィンの演奏で。ピーターさんも映画を数日前に見たそうで、すごく良い!!って感激されてました。1930年代のアイルランド。すごいヘンピな村で集会場を復活させようとするジミー。そんな具体的なことを映画にしているのだけど、今の日本に置き換えてもいいような映画。(まったくです) ケン・ローチ監督で地味な映画なので終わっちゃうだろうから早く観に行くように、とのこと。で、ドーナル・ラニー率いるクールフィンはピーターさんが今までに行ったライブの中でももっとも感激したライブだったそうです。またいつか復活してくれるんでしょうか…

M13.  Sharon Shannon with Woodchoppers -  Mouth of Tobique
そしてそのクールフィンで初来日したのが、我らがシャロン・シャノン。当時はすごくシャイな子だったんだけど、今はほんとにビックになりました。小さな鍵盤ではないボタンのアコーディオンを弾く。蛇腹のさばき方がホントに見事。左手にスポンジを挟んでいるんですよ、と(笑)

これですね →

ピーターさんはみんなが楽屋でこの曲をリハーサルしているのを見たのですが、もうすごく難しい曲なんでみんな間違うんですよね、と。すごく心配だったんだけど本番ではバッチリ決めていた、と。本当にミュージシャンとしては非常にやり甲斐のある曲かな、とお話しされてました。


いや〜ピーターさん、ありがとうございました。そしてシャロンが美味しいところ持ってった感じかも(笑)ちなみにピーターさんがかけたLive in GalwayのCDはウチで販売してた時期がありまして、結構なヒットになったんですよね。あとシャロンのライヴDVDですが、まだ多少ウチに在庫があります。追ってウチのCDショップにもアップしていかないと…やばい。やること山積!

しかしピーターさんってホントにピュアで自由な音楽ファンなんだよなぁーと思います。だから私もプロモーションものの資料をお渡しするのも、なんか申し訳ない、というか…普通の音楽評論家の人とは全然違う。そこがリスナーの信頼をこんなに得ているところなんでしょうね。素晴らしいです。

ピーターさんが書かれた本もお薦めです。特に「ラジオのこちら側で」は名著。シンコー時代に電話で一般の音楽ファンの人にレコードの音を聴かせたりしてて上司に怒られた、とか笑えるエピソード満載。…っていうか「音楽はみんなで聞くものだ」ってのが心に残りましたね。あぁ、そうか。だから私たちはラジオとかライブが大好きなんだなぁ、って。必読。