映画「おみおくりの作法」を観ました。これは素晴らしい!



いやー これは素晴らしい。「おみおくりの作法」原題 STILL LIFE。

この俳優さん、エディ・マーサン,この名前をずっと覚えておきたい。前に観た時は酷い役をやっていた。この映画のDV夫の役。蛇みたいな気持ち悪い奴で、でも印象にすごく残っている。印象的な俳優さんだが、なんと本作が初の主演映画だそうだ。

今回は真面目な真面目な民生員の役。この感情を殺して生きる感じがなんだか「アルバート氏の人生」のアルバートに似ている。毎日決まった食べ物を食べ、きちんと整頓されたフラットの一部屋に住み、感情を殺して生きているようなジョン・メイ。彼の仕事はたった1人で身寄りもなく亡くなった人の「お見送り」だ。

その人の人生を調べて、その人にぴったりの弔辞を書き、その人の宗教にあった教会でお葬式をあげて送りだす。丁寧に仕事をこなすジョン。しかし経費削減、人員整理のため仕事をクビになることが決まり、最後の仕事ということで任されたのは、なんと自分のフラットの向かいの部屋に住むビリーという男のお見送りだった。

この男の人生を調査するうちに、ひどい人生を送ってきたようにみえるビリーに少しずつ影響され、ジョンの生活に少し変化が訪れる。普段飲む紅茶ではなくホットチョコレートを飲み、食べたことのない食べ物を楽しみ、着たことのない服を着て…そして…

最後「えーーーっっ、それはないでしょ!」みたいな事が起こり、でも、最後は感動の嵐、みたいな感じで終わっていく。見応え最高、90分ほどで短いし、映画を見ている間、本当に良い時間を過ごせたと思う。

この俳優さんがとにかくとにかく素晴らしい。もう押さえた演技にもうジワジワ感動が押し寄せる。監督/脚本/制作はイタリア人なのだが、ガーディアンに掲載されていた「お見送り」の仕事をする人たちの記事を読み、それに深く感銘を受け、半年以上に渡る取材のもと、この話を完成させたのだそうだ。ちなみにジョン・メイ役をエディ・マーサンにすることは、もう監督が脚本を書く前に決まっていた。というか、エディを主役にイメージしながら、監督は民生委員ジョンを創りあげた。

小津安二郎の晩年の作品に影響をうけたというほとんど動かないカメラ、また終わりの方になるまで人の肩越しにジョンを写さない…など極度に押さえた演出がほどこされた。非常に静かな静か〜な映画だ。だからこそ、圧倒的な説得力を持つ。これはヒットするよね…

この映画にこの邦題を付けた配給会社さんにも拍手を送りたい。素晴らしい映画をありがとう。私が行った時も長蛇の列でした。なにせネット予約とか出来ないシネスイッチ。早めに行ってチケット買わないと入れませんので要注意。

このポスターのデザインも上手いと思う。外国のもののままだとイマイチだっただろうな。さすがだよね…