発信する側からお金をもらうしかないのかもしれない、ということ。




いろんな分析とはともかく、大きくうなずいたのはここ。テイラー・スィフトはある程度の条件を満たしているから、このビジネスモデルが可能なんだ、という事。
(つまり彼女のビジネスモデルを小さなマーケットしか持たないアーティストたちが参考にしてたら、とんでもない、ということ)

そして「コンサート事業は高コストなビジネスなので通常、限られたアーティストしか稼げるものではないからです」というところ。まったく同感でございます、ハイ。

また「CDも買わないようなアーティストのライブに行こうと人は思うでしょうか。無料動画で済ませませんか?」というのもするどい。でもこれもちょっと微妙でウチのアーティストなんかライブは行くけどCDはYou Tubeで聴くからいいや、ってお客さんが意外といるようにも感じるんだよな…。だからコンサート動員の方が、CDの売れ数よりも全然良かったりもする。

それにしても…と思う。例えばミュージシャンに送金をする瞬間は、私が仕事をしていてもっとも幸せを感じる時の1つだ。この業界にいる社会的責任をまっとうし、経済的なことに貢献している実感が感じられる。でも今やそんな悠長なこと言ってられないかもしれない。ミュージシャンにたいして金銭上の「ボス」でいられることは、これからは難しいかもしれない。というのは、現状音楽業界ではリスナー側からお金を取ることはどんどん難しくなっているからだ。

ただ私のような立場の者が音楽業界で生き残って行く方法は、実はある。というか、そっちの方がおそらく遥かに儲かる。実は、これから将来性がある音楽の仕事は「発信したい」側からお金を取る、こと。つまり「発信したいなら私を雇いなさい。私が手伝ってあげる」と言って、ミュージシャン側からお金を取ることだ。今すでに「このフェスティバルに参加したいなら幾ら払いなさい」「このショウケースで自分のバンドを紹介したいなら幾ら払いなさい」「CDリリースしたいなら何枚買い取りなさい」というのは、あちこちで始まっている。それはそれで立派な仕事なんだし、双方合意しているのなら、別になんら問題はない。ただ問題は私にとっては、自分もそういう道に行くのか、ということだ。

原発の事故があったとはいえ、日本はまだ海外のアーティストにとって憧れのマーケットだ。別にお金にならなくてもいい。バイオグラフィーに「日本でも演奏しました」と書けるならお金をはらってもいい、って言うミュージシャンは多い。そして…それに加えて日本のマーケットにおいては、言葉が通じないと歯が立たない、ということもある。音楽業界は他の業界と一緒で激しくガラパゴス化しており、他の国でのビジネスモデルがまったく通用しない…などなど。そういう外国のマネジメント会社やアーティスト、音楽団体からお金を取ったらかなり良いビジネスになるとは思う。

うーーーん、つまりマネジメント契約? コンサル契約? それ自体は悪くないだろう。が、私はあまり好きなスタイルではない。というのもやはり金銭の授受の方向はとても大きいからだ。どっちからどっちにお金が流れるか…というのは大きい意味を持つからだ。あくまでアーティストと対等といるために、やはりミュージシャンに対して、私は支払うほうでいたい。そしてアーティストを選ぶ方で私はありたい。

が、それももう難しいかもしれない。「CDの販売は大変だけど、ライブの現場は良くなってきている」って、よく媒体に載るのを見るのだけど… そんな事、いったい誰が言ったんだろうと思う。私の周りのコンサート制作にかかわる人たちは、みんな必死な想いでコンサートを制作している。明らかにチケットは売れなくなってきている。そもそも音楽に対して対価を払う、という事がとても難しい状況になってきている。しかしそこに投資をし、なんとか聞いてもらいたい、というアーティストの数は増えてきている。というか、おそらくいなくならないよね。

しかし想像してみる。例えば自分がアーティストを選べない立場になると…どういうオチになるかというと…自分の紹介する音楽がどんどんダサいものになっていく、ということなのだ。音楽はアーティストにとっても表現の場なのであるが、それは私も一緒である。こんなかっこいい音楽が好きな私が好きだから、この仕事を自信を持って続けていられるのだ。が、果たして、それがいつまで続けられるのか。もしかしたら、あと5年もたないかもしれない。

いや、それも間違いだな。おそらく自分1人で食べて行く分にはかっこいい音楽をやりつづけることは不可能ではないだろう。マネージャー業でかっこいい音楽やってる人はいくらでもいる。ただダサい音楽の方が売れるから、そっちの方が予算はいいんだ… そして、そういう仕事をすることを自分が納得するのか? また多くのウチのミュージシャンは自分が食べて行くのだって大変なのに、果たして私まで雇う余裕があるのか?

私はこの仕事につく前、PR会社で仕事をしていた。そこでは予算をもらえる物であれば何でも仕事にした。若い女の子がデビューして「足出し胸出しオッケーですから〜」とか言って写真週刊誌のカメラマンに電話する。くだらない音楽ほど売れるから、そういう音楽ほど予算が取れた。そして写真週刊誌のグラビアとか取って来るとクライアントに喜ばれた。一方で私が好きな音楽は売れないからレコード会社が出してくれる宣伝予算は少なく、いつもヒーヒー言っていた。あんな時代を経て、やっと自分の好きな音楽で身が立てられると思ったのに、あれから20年(くらい?)、また嫌いな音楽の仕事をしないといけないのか。いいや、20年もったんだから良しとしないといけないのか。

こんな場所も出来たが…実際このカフェは常にお客で一杯になっているんだろうか? 300円で100人来て…やっと30,000円だ。そしてお客は300円の音楽を聞いてくれているんだろうか? 音楽で生き残るにはいったいどうしたらいいんだろうか?

PS
まぁ、でもだからこそ、今までこんなに頑張ってアーティストとの信頼関係とか築いてきたわけでもあるわけで… もしかしたらこれは正しい道なのかもしれない。…とかなんとか。I am thinking loud(笑)