bar clear all


2017年9月22日金曜日

来日までもうすぐ:チーフタンズ物語(4)

(1)(2)(3)からの続きになります。そして早くもやってくるオ・リアダと永遠の別れ…
  

1970年、ショーン・オ・リアダのクラシック作品が、完成後10年を経て(やはりこちらも)ガレク・ブラウンの出版社から発売になります。そんなに完成が遅れたのは… おそらくオ・リアダの破滅的な性格に起因するものだったんだと思います。

でもこれに対して著作権協会への加盟を根回ししたのはパディだったのだそうで、そういうところ、パディはプロフェッショナルだし、2人の友情を感じますね。

それにしてもガレクは本当にこの時期、アイルランドの音楽シーンにホントに投資してたんですね…(ウチにもそういうスポンサーさん、あらわれないもんか…あ、話がずれました/笑)

ところがその楽譜の出版記念パーティでオ・リアダは、突然キョールトリ・クーランの解散を発表するんです。その場にいたみんなは目が点!!!?

そしてオ・リアダは「チーフタンズに対して私は同情以外のなにものをも感じない」「チーフタンズは私のグループの分派であり、キョールトリ・クーランがなければ存在していなかったバンドだ。父親が息子を否定できないのと同じで彼等を否定することはできない。もしろ敬意を感じているが,彼の音楽には限界があると思う」とまで言ってのけるのです。

この解散発表とチーフタンズ批判がいちばんショックだったのは当然パディで、その日の夜遅くパディはキョールトリ・クーランの解散を撤回するようにオ・リアダに電話をいれるのでした。

が、電話を取った奥さんが言うには、ショーンは今、具合が悪くて話せないのよ、と言う…

実は多くの人が知っていた事実なんですが… オ・リアダはアルコールという重大な問題をかかえていました。酒浸りの長い年月でオ・リアダはまるで白髪の老人のようでした。結局のところ彼は、彼が望んだようなクラシック作曲家としては成功しなかった。そこに彼の限界があったのだろう、と、チーフタンズの名付け親であるジョン・モンタギューは語っています。うーん、難しい。誰の人生もホントに難しい。

でもこのショッキングな解散宣言のあとパディとオ・リアダは、しかし関係を修復していたんだって。当時オ・リアダはダブリンで仕事があるとよくガレクの家に泊まっていて、パーティともなれば皆が集まり、そんな中で2人は本当に仲が良かった。ある意味キョールトリ・クーランというビジネス母体が消滅し、そこから解放されたことで、2人の関係から緊張関係がほどけたのかもしれません。これはもう想像するしかないのですが。 

ガレクのパーティでパディが演奏するとオ・リアダは「パディ、君はアイルランド最高のミュージシャンだね」とパディの肩をたたいて言っていたそうです。なんか泣ける!

そして1971年夏、パディはクラダ・レコードから発売されるオ・リアダのアルバムの共同作業を行っていました。彼の死はもう数ヶ月先に迫っていました。本人をふくめ、皆そのことを認識していたといいます。録音終了後、ガレクの車でオ・リアダを駅まで送ったパディはコークに帰る電車を待ちながら、立ち話をします。

「彼の具合が悪いのはよく分かっていた。肝硬変の兆候があったんだ。顔色は死人みたいで、まだ40歳だというのに恐ろしく老け込んでいたよ」
「妙に父親めいた口ぶりで、“チーフタンズの2枚のアルバムには大きな将来性を感じる”と語り、ぼくに“今後も続けるつもりはあるのか”と訊いてきた。僕は答えた“もちろんだよ、ショーン。まだ始まったばかりだし、やりたいことは山ほどあるんだ”と」

そしてこのアルバムの編集作業は9月に終了し、死ぬ数日前にミックスを聞いたオ・リアダは、ベットの中から身振りで、その音源にオッケーを出したのだそうです。

オ・リアダが亡くなったのは1971年10月3日の事でした。

今、オ・リアダが生きていて、パディたちの成功、アイリッシュ・ミュージックの成功を知ったらどう思うんでしょうかね。

こんなドキュメンタリーも見つけた。アイルランドで作られた最初のゲール語ドキュメンタリー映画。オ・リアダが音楽を担当した「Mise Eire」の制作秘話。当時、あの音楽はユーロヴィジョンで「リバーダンス」が流れた時と同じようなショックだった、と説明しています。アイルランドのすべての文化が花開いた時期だったのでしょうね…



オ・リアダのメモリアル・コンサート。最初の半分は亡くなった翌年、72年の公演のものでパディやショーン、マーティンの姿も見えます。70年代のパディの演奏、ホントにヴィヴィドですなぁ…。後半は1981年のもので、コークで若い世代のミュージシャンが集まったもの。



時代は進み、生きている者たちはしかし、この荒波を乗り越えていかねばなりません。いよいよフォーク・リバイバル最盛期。そしてパディとチーフタンズには、その後のサウンドの要となるデレク・ベル(ハープ)という、素晴らしいミュージシャンとの出会いが待っています。
(5)に続く。


チーフタンズの公演チケットは10月9日の「秋のケルト市」でも購入いただけますよ。アイルランドの音楽、文化、カルチャー、食が集合したイベントです。アイルランドのガイド・ブックを最近出版された山下直子さんのトークショウ他、豊田耕三さんのホイッスル・ワークショップなど盛りだくさん。是非ご来場ください。詳細はここ


チーフタンズ来日公演の詳細はこちら。

11/23(祝)所沢市民文化センターミューズ アークホール
11/25(土)びわ湖ホール
11/26(日)兵庫芸術文化センター
11/27(月)Zepp Nagoya
11/30(木)Bunkamura オーチャードホール 
12/2(土)長野市芸術館メインホール
12/3(日)よこすか芸術劇場
12/8(金)オリンパスホール八王子
12/9(土)すみだトリフォニー大ホール